2016年2月6日土曜日

怪しい植物群

 今晩は。ミニキャッパー周平です。
 第2回ジャンプホラー小説大賞、絶賛募集中。ぜひぜひご応募を!
 そして、第1回ジャンプホラー小説大賞銅賞受賞作、「ピュグマリオンは種を蒔く」絶賛WEB公開中です。キャッチコピーは「地獄へ導く恋」。衝撃の猟奇純愛ホラーをどうぞよろしく。

 さて、「ピュグマリオンは種を蒔く」の作中では、「シシクイバナ」なるおぞましき植物が物語の鍵を握る訳ですが――今回は、植物をテーマにしたホラー作品を見ていくことにしましょう。


 H・G・ウェルズ「めずらしい蘭の花が咲く」(『世界最終戦争の夢』収録)は、植物怪談の古典中の古典。


 蘭のコレクターが、販売会で手に入れた新種の蘭の苗。それは、ジャングルで発見された変死体のそばで見つかったといういわくつきの一品だった。コレクターは、新種の蘭がどのような花を咲かせるか期待して育てるが……。いかにも十九世紀らしい怪奇小説というか、新種の蘭が見せる凶暴性、人間に牙を剥くその姿は、おどろおどろしくも、現代の目で見るとどこかユーモラスにさえ感じます。


 ジョン・コリアー「みどりの想い」(『怪奇小説傑作集2』収録)もやはり、新種の蘭を手に入れた男の話。



 蘭を育てていた部屋で、猫や人間が姿を消し……という、案の定とも言える始まりなのですが、こちらでは、早々に主人公たちが蘭に取り込まれて、蘭の一部になってしまいます。植物と完全に同化し、全く身動きができないまま、精神もゆっくりと植物に侵食されていく中、部屋に訪問者が……というストーリー。一ミリも動けない極限状況の中で、ただならぬ緊張感の高まっていく、「奇妙な味」のホラーです。

 英国作家のこの二作を見ると、日本で桜に特別な思いを抱く人が多いのと同じように、英国では蘭の花に妖しい匂いを感じるのがポピュラーなのかも知れませんね。

 そして、日本からは、石黒達昌の代表作「冬至草」(『冬至草』収録)を。



 図書館の地下蔵書室、古い学術雑誌のページの隙間から、押し葉の形で見つかった植物。
 放射性物質を含んだその植物「冬至草」の正体を探る調査から浮かび上がってきたのは、昭和初期に冬至草の研究に生涯を捧げた、ある男の末路だった。
 近づく者を魅了し、深淵へと引きずりこむ冬至草は、獰猛な生態とは裏腹に、幻想的な美しさをもっています。戦場跡に芽吹き、夜の闇の中で光るその姿は、まさにこの世のものではありません。そっけないレポート形式の中に、人間を惑わす悪夢のような「美」を鮮烈に描ききった傑作ホラー。ぜひご一読を。

 さて次回は……この前食べたルーマニア料理が美味しかったので、ルーマニアホラーとか探してみます。


(※『世界最終戦争の夢』『怪奇小説傑作集2』『冬至草』の書影はAmazonより引用しました。)