2014年12月25日木曜日

学園ホラー編(1)『六番目の小夜子』


 物語を愛する皆様、始めまして。JUMPjBOOKS編集部員のミニキャッパー周平です。
本日より始まりました当ブログは、『ジャンプホラー小説大賞』の宣伝隊長に命ぜられた私が、心に残るホラー作品を突発的に紹介していく不定期企画です。

 最初のお題は、「学園ホラー」。

 学校って、ものすごく怖い場所だと思うんです。
 未成熟な人間関係、受験や将来への不安、同級生へのコンプレックス、などなど、無数の理不尽に対する「恐怖」が潜んでいる場所だから。
 そんな「学校」という空間に、影を引きずり出すような秘密の儀式が持ち込まれたとき、呼び起こされるのは……。

 という訳で、「ミニキャッパー周平の百物語」、第1回にご紹介するのは学園ホラーの傑作、恩田陸『六番目の小夜子』です。


  舞台となる高校の、三年生の間に長年受け継がれている「儀式」は、作中ではトランプのゲームにたとえて説明されていますが、今だと「人狼ゲーム」を思い浮かべると理解しやすいかも知れません。「人狼」が正体を見破られないように「村人」の一定人数を消せば勝利、というのと同じ要領で、「サヨコ」に選ばれた生徒が一般生徒を騙し切って、一年に渡る儀式をやり遂げたら「サヨコ」の勝利、というわけです。

 2代目の「サヨコ」は事故死しているという、いわくも伝わる、このしきたり。
 6代目の「サヨコ」に選ばれた生徒が、始業式の早朝、最初の「儀式」を行うため教室に忍び込むと、そこには見知らぬ少女の姿が。転入生であるその少女は、「沙世子」という名前だった。
 儀式の行方は? 沙世子の正体は? 真実に近づこうとした者に襲い掛かるのは……?
複数の謎を追いながらのサスペンスフルな展開と、高校三年生の焦りや迷いを掬い上げる、丁寧な心象描写が魅力の作品。

 しかし、この作品の白眉はなんといっても、「サヨコ」に課せられる儀式のひとつである、「演劇」の場面。
 ストーリーの中盤。体育館において全校生徒の目の前で、(思いもよらぬ方法で)行われる劇「六番目の小夜子」上演シーンは、噂の中の存在でしかない「サヨコ」がまるで実体を持ち、その肉声を読者の耳にまで届けてくるようで、まさに鳥肌もの。日本ホラー史でも屈指の名場面として、伝説になっています。
 私は中1の時に読んで泣きそうになりました。神シーンです。あの場面を体験するために、是非手にとって欲しい一冊。


 これから、不定期にホラー作品をご紹介していきます。今後、基本的には深夜2時に更新の予定です。

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魔女の呪いを巡る学園ホラーサスペンス『放課後の魔女』

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『六番目の小夜子』書影はAmazonより引用しました。販売ページのリンクは以下
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